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Channel: 大高 博幸 –美的.com
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大高博幸の美的.com通信(232) 美的.com 2014年度 ベストシネマ! 『怪しい彼女』ほか 試写室便り Vol.71

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ⓒ2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved

口を開けば罵詈雑言。なまり丸出し、頑固な性格。
でも、見かけはキュートで愛くるしい女の子。

70歳の ばあちゃんに、いま、“全盛期”が やってきた!!
怪しい彼女』 (韓国映画/125分)
7.11 公開。ayakano-movie.com

【STORY】 キュートなルックスと並外れた歌唱力を持つ20歳の女の子、オ・ドゥリ。口を開けば罵詈雑言、なまりは丸出し、おまけに他人の意見は いっさい無視。そう、彼女は歯に衣着せない毒舌で、わが道を猛烈に突き進む、最強の20歳。突然みんなの前に現れ、その魂あふれる歌声で周囲を魅了し、またたく間にスターの座を駆け上がっていく。しかし、誰も彼女の秘密を知らなかった。実は、彼女の正体は 70歳のおばあちゃんだということを――。 (プレスブックより。一部省略)

勝手に決定、美的.com 2014年度 ベストシネマ!
『怪しい彼女』は 誰もが笑って泣けちゃう傑作エンターテインメント。精神衛生上、とてもプラスになるコメディです。最良のセンチメンタリズムがテーマの奥に潜んでいるので、笑いが空虚に なりません。僕は何度も何度も大笑いして 目尻に笑いの涙が溜りっぱなし、さらに2~3ヶ所で感動の涙をポロポロ流し、目の下がツッパってきて困りました。But、そんな自分を 「まだ それほど腐っていないな」と思わせてもらえて、Very Very Happy! そして最終的には、「心の中に、この映画に出てくる『青春写真館』があれば、“全盛期”をリプレイできる」って思うコトにしたんです(あつかましいけれども ネ)。

最初に画面に現れるのは 70歳の毒舌ばあさん、ナ・ムニ演ずる オ・マルスン。口が悪い上に意地っぱりで、トラブルばかり起こしている。昔の奉公人のパクさんだけは 「お嬢さん(マルスンばあさんのコト)は 心の美しい人だ」と かばうのですが、ひとり息子の奥さんは ストレスが昂じて入院。家族の間では マルスンを介護施設に  という話まで出る始末で、ひとり寂しく夜の街に出たマルスン…。そんな彼女が ふと目にしたのは、見慣れない『青春写真館』という名の 一風変わったフォトスタジオ。店先のオードリィ・ヘプバーンのポートレートに引き寄せられるように中へ入った彼女は、遺影にするつもりで写真を撮るコトに…。コティのエアスパンというフェースパウダーと ランコムの容器に似た口紅でメークを仕上げると、「私が50歳、若く写してあげますよ」という館主の言葉と共に シャッターが切られる…。

映画がトンデモなく面白くなるのは 次の瞬間から。館の外に出てきたマルスンは、髪も服も言葉づかいも 70歳のまゝ、なんと 20歳の顔に戻っている! 追いかけて飛び乗った市内バスの中で、薄化粧にサングラスをかけたオネエ言葉の男子(「二重の整形手術 したばっかりなのよ」と言う彼の台詞に場内大爆笑!)の、そのサングラスに映った自分の顔にビックリ驚天。「このまゝ死んじゃあ可哀想すぎるからって、神様が若返らせてくれたんだ。ならば…」と腹を決めたマルスン(演ずるのは シム・ウンギョン)は、安否を気づかう家族を よそに、髪形をオードリィ風に変え、流行の服を買い込み、「オ・ドゥリ」と変名して、パクさん(彼女がマルスンだとは気づいていない)が経営する下宿屋に住みつく…。

ココまで聞いただけで面白いと感じたでしょう? それから先もモチロンとっても面白いのですが、回想シーンで 夫を亡くしたマルスンが 懸命に幼い息子を育てゝいる場面や、オ・ドゥリからマルスンに戻ってしまった彼女が、自分をスターにしてくれた心優しいプロデューサーと 一瞬 目を合わせる場面など、女ごころの美しさ・愛らしさ・哀しさに、誰でも胸が震えてしまいます。

脚本&監督は、『マイ ファーザー』や『トガニ 幼き瞳の告発』で注目された良心派の ファン・ドンヒュク。
出演者は、主演の シム・ウンギョンと ナ・ムニのほか、パク・イナン(パクさん役)、ソン・ドンイル(マルスンの最愛の息子役)、B1A4のジニョン(マルスンの孫息子役)、そして イ・ジヌク(優しくて上品でハンサムな音楽番組のプロデューサー役)など、全員が好演。さらに人気沸騰中の キム・スヒョンが、ある素敵なカッコイイ場面で 特別出演を果たしています。

P.S. シム・ウンギョンって名前、思い出していたゞけますか? そうです、このコラムでも紹介した『サニー 永遠の仲間たち』(通信(96))では 主役の少女を、『王になった男』(通信(136))では イ・ビョンホンの身代わりとなって死んでしまう毒見役の女官を演じた女の子(現在20歳)。本作では、「短い棒を振りまわして、一生を棒に振る気か」とか、「夜も うまけりゃ最高だぁ」とか、Hな台詞を平然と口にする場面等々で、お固いはずの批評家さんたちを大笑いさせていました。彼女は 韓国映画界を代表するスター女優に、必ず なると思います。

『怪しい彼女』は お休みの日の昼間、親友と一緒に見るのに最高の映画です。

 

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ⓒPhoto courtesy of Warner Bros. Pictures
ⓒPhoto by Merrick Morton

ありえないはずのAI(人工知能)との恋に まさかの共感!
今の時代だからこそ誕生した、新たなラブストーリー。
her 世界でひとつの彼女』 (アメリカ映画/126分/映倫 PG-12)
6.28 公開。her.asmik-ace.co.jp

【STORY】 そう遠くない未来のロサンゼルス。ある日 セオドアが 最新型のAI(人工知能)型OSを起動させると、画面の奥から明るい女性の声が聞こえる。彼女の名前は サマンサ。AIだけど ユーモラスで、純真で、セクシーで、誰より人間らしい。セオドアとサマンサは すぐに仲良くなり、夜寝る前に会話をしたり、デートをしたり、旅行をしたり…… 一緒に過ごす時間は お互いにとって いままでにないくらい新鮮で刺激的。ありえないはずの恋だったが、親友 エイミーの後押しもあり、セオドアは恋人としてサマンサと真剣に向き合うことを決意。しかし感情的で繊細な彼女は 彼を次第に翻弄するようになり、そして彼女のある計画により 恋は予想外な展開へ――! “一人(セオドア)と ひとつ(サマンサ)”の恋の ゆくえは果たして――?(宣伝用チラシより)

近未来のL.A.、最新のAI型OS、ホアキン・フェニックスの主演、スカーレット・ヨハンソンの“声だけ”の共演、アカデミー賞®オリジナル脚本賞受賞…。これらの総合力のためか、大作というワケでは決してないのに マスコミ試写は連日盛況。僕が観た日は開場5分前(上映開始の35分前)に定員に達してしまい、入場できないジャーナリストが続出した程でした。

当然ながら 本作にはPC操作の場面が多く、必然的にアクション(動き)に制約が生じるワケですが、それを脚本と演出が巧みにカバーしている というのが僕の第1の感想。まず、装置や衣装のパステルポップな色彩(コーラルオレンジ、イエロー、ピーチ、そしてブルー)が明るくて とてもキレイ。さらに、PC内に住んでいるサマンサ(ヨハンソン)を セオドア(フェニックス)が 人混みの中に連れ出し、踊るように歩き回る場面等々が、その制約を補っているのです。

ホアキン・フェニックスは、『ザ・マスター』や『エヴァの告白』とはガラリと変わった役柄で、今回は非常に健康的かつ ロンサムでナイーブでチャーミング。興味深かったのは、少年の顔と大人の顔が同居しているような顔のアップが多いコトで、しかも それが観客を少しも退屈させないから立派でした。さらに、サマンサ登場以前に テレフォンセックスならぬ PCセックスシーンがあるのですが、彼の演技は決して下品な雰囲気にはならない…。そこにスターとしての彼のセルフプロデュース意識が、良い意味で表れていると感じました。ちなみに彼は、若くして亡くなったリヴァー・フェニックス(『スタンド・バイ・ミー』が代表作)の実の弟。この件、御存知でない方が意外に多いようです。
スカーレット・ヨハンソンは 一切姿を見せず、ヒャッカラ声というか、カスレた感じの声が印象的。
脇役ながら、結婚に焦ってガツガツしている女性の役を オリヴィア・ワイルドが好演。近作『サード・パーソン』での野心的な記者役などよりも、数段 適役で良かったです。

どんなに時代が進化しても、人間が人間という生き物であるコトに変わりはない…。意味不明でしょうが、アナログ人間の僕は、そんな安心感を抱きながら試写室を出ました。

 

paganini

Ⓒ 2013 Summerstorm Entertainment / Dor Film / Construction Film / Bayerischer Rundfunk / Arte. All rights reserved

聴け、人生と引き換えにした、この音を――。
パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』 (ドイツ映画/122分/映倫 PG-12)
7.11 公開。paganini-movie.com

【STORY】 1830年、イタリア。ヴァイオリニストの ニコロ・パガニーニは 天才と称えられ、華々しいキャリアの絶頂にいた。女、酒、ギャンブルと、不道徳きわまりない私生活を送っていたが、突然現れてマネージャーを買って出た謎の男 ウルバーニが、彼に大成功を もたらしたのだ。ヨーロッパ全土で、パガニーニが まだ名声を獲得していないのは 英国だけだった。そんな なか、指揮者のワトソンが全財産を投げ打って、バガニーニをロンドンに呼び寄せる。パガニーニは、歌手を目指すワトソンの娘 シャーロットと出会い、まだ原石だった彼女の美声を開花させる。音楽を通じて深い絆で結ばれ、初めて本当の愛を知るパガニーニ。しかし、パガニーニが 己の手から離れることを恐れたウルバーニは、残酷な計画を練り始める。そして ついに、ロイヤル・オペラ・ハウスでの初日を迎えるのだが――。(プレスブックより)

“21世紀のパガニーニ”と謳われる デイヴィッド・ギャレットが、5億円の名器 ストラディヴァリウスを奏でる“超本格的音楽映画”。その演奏の素晴らしさが真に圧倒的ですが、ストーリーもドラマティックで、最後の最後まで興味をそゝります。
シャーロック・ホームズが歩いて来そうな霧の夜のロンドン、バラの蕾のように若く美しいシャーロットとパガニーニの恋、パガニーニを私物化しようとするウルバーニの計略、パガニーニの評判を意のまゝに操ろうとするタイムズ紙の女性記者の行動 等々に惹きつけられ、上映時間122分が長く感じられるコトは ありませんでした。

ヴィスコンティ監督の『ルートヴィヒ/神々の黄昏』(1973)等に主演した美男俳優:ヘルムート・バーガーが、バーガーシュ卿(英国王立音楽院創設者でもある貴族)の役で出演しています。が、注意深く観ていないと、それが彼だとは気づけない…。僕は、特徴のある鼻の形で、それがヘルムート・バーガーだと どうにか認識すると同時に、時の流れというモノを痛感させられてしまいました。

では、また近いうちに!

 

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ、美容業界歴47年。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 http://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

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