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大高博幸の美的.com通信(291) 『しあわせはどこにある』『靴職人と魔法のミシン』『ハイネケン誘拐の代償』『約束の地』『海街diary』 試写室便り Vol.94

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© 2014 Egoli Tossell Film/ Co-Produktionsgesellschaft "Hector 1" GmbH & Co. KG/Happiness Productions Inc./ Wild Bunch Germany/ Construction Film. 2014 All Rights Reserved.

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幸せって なんだろう? どこに あるんだろう――?
Google先生に聞いても 分からない。
答を さがして、僕は 旅に出た。

しあわせはどこにある』 (イギリス=ドイツ=カナダ=南アフリカ合作/119分)
6.13 公開。shiawase-movie.com

【STORY】 精神科医のヘクターは、美人で しっかり者の恋人 クララと一緒に、ロンドンで何一つ不自由のない生活を送っていた。しかし、毎日 患者たちの不幸話を聞き続けていくうちに、自分の人生も価値のない物のように思えてきてしまう。「幸せって なんだろう? それは どこにあるんだろう?」 ヘクターは答を求めて、旅に出ることを決意する。イギリスを旅立ち、中国からチベット、アフリカ、そしてアメリカへ。行く先々で とんでもないハプニングに巻き込まれながらも、彼は各地で出会った幸せのヒントを手帳に書き記してゆく。はたして旅の終わりにヘクターは 愛と幸せを見つけ出すことができるのだろうか――? (試写招待状より)

1910年代型のプロペラ飛行機で空中回転を試みたら、後部座席に乗せていた愛犬が真っ逆さまに落ちてしまった! あわてゝ急降下を始めた途端、ヌーッと悪漢が現れて首を絞められる! ハッと我に返ったら夢だったというマンガチックな導入部から、主人公ヘクターの他愛もないようでいて面白い話が エピソディックに展開するという内容。精神科医には珍しく(多分)、ヘクターは 無邪気さと少年性を持ち続けている中年男性。そのパートナーであるクララは、製薬会社のマーケティング部に所属する中堅クラスのOL。年齢的には ヘクターが かなり上のようですが、クララのほうが お姉さんっぽいという設定で、このカップルは 何となく ほゝえましくて、いい感じ…。
幸福を求めてやまない人々のために フランスの精神科医が執筆して大ベストセラーとなった物語を、『Shall We Dance?』や『マイ・フレンド・メモリー』の ピーター・チェルソム監督が映画化した、ちょっと奇妙な ロマンティック・コメディです。ヘクター役は 個性派の サイモン・ペッグ。クララ役は『ゴーン・ガール』でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた ロザムンド・パイク。脇を固めるのは、クリストファー・プラマー、ジャン・レノ、トニ・コレットら、錚々たるメンバー。ロケーションは、ヘクターが旅をする 4つの大陸で行われています。
ユーモアとペーソス満載の笑って泣ける楽しい映画ですが、幸せってなんだろうと 改めて考えさせてもくれる119分。ヘクターは 旅先で多くの人物に出会い、「あ、コレだ!」と気づいた幸せのヒントを手帳にメモしていくのですが、11ほどあった その1は、「比較するコトは 幸せを台なしにする」でした。この 1だけをとっても、思い当たるフシは 沢山あるなぁという感じ…。
チラシの ふたりの表情が、とても自然かつ新鮮で僕は大好き。But、サイモン・ペッグはスクリーン上では もっとシワっぽく、ロザムンド・パイクの頬には もっと肉がついていました。このスティルのパイクは、頬骨の下からコメカミにかけてのシェーディングが 非常に うまく入っているので、メークのお手本にもしてほしい。

 

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© 2014 COBBLER NEVADA, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ニューヨークの下町に芽生えた
大人のための おとぎ話。

靴職人と魔法のミシン』 (アメリカ/98分)
6.5より公開中。kutsushokunin.jp

【STORY】 年老いた母親と ふたり暮らしのマックスは、彼女ナシ & 貯金ナシの孤独な中年男。マンハッタンに代々続く小さな靴修理店を営む彼にとって、人生は とてつもなく平凡で単調なものだった。そんなある日、愛用のミシンが故障し、物置から旧式ミシンを持ち出したマックスは、仕上げた靴を試し履きした瞬間、目を疑うほどの衝撃を受ける。何と鏡に映ったのは、いつもの冴えない自分ではなく、その靴の持ち主だったのだ! かくして “魔法のミシン”を手に入れたマックスは、他人に変身して刺激的な毎日を満喫するも、思いがけないトラブルに巻き込まれて…。(試写招待状より)

N.Y. ロウアー・イーストサイドに展開する現代版おとぎ話。靴職人のマックスと魔法のミシンに、地上げ騒動 + 行方不明の父親とのエピソードを織り交ぜた、笑いと驚きと哀感に満ちた ヒューマン・コメディ。
魔法のミシンの由来が紹介される20世紀初頭(たしか 1903年)の ユダヤ人街でのプロローグから、しっとり & じんわりとくるエンディングまで、僕は興味津々、楽しく鑑賞しました。地上げ反対運動のリーダー格の若い女性:カーメン(メロニー・ディアス)の登場場面や、地下の物置で埃を被っていた古いミシンの出番への移行が巧みで、自然かつスムース(ヘンにアクセントをつけたりしていない演出がいゝ)。様々な人種や世代(故人まで!)の お客さんから預かっていた靴を履いて 他人になりすますシークエンスは、少々盛り込みすぎだ と感じましたが、「何を言ってんの、そこが面白いのに!」と怒る知人(すぐに怒る人です)もいたので、もしかしたら僕がヘンなのかも(笑)。
性格と仕事の腕は素晴らしいのに、生き方が相当不器用なマックス役の アダム・サンドラーが 適役・好演。動きや台詞の少ない場面でも、優しい性格とデリケートな感情が目に溢れているところが、とてもとても良かったです。その他、変わった現れかたをする マックスの父親役の ダスティン・ホフマンと、特に 隣りで理髪店を営んでいるジミー役の スティーヴ・ブシェミ(下のスティルのジャンパー姿のオジサン)の 人情味 & 存在感が際立っていました。
本作は スーパーナチュラルな要素で成り立っています。第1にオススメしたいのは、おとぎ話や寓話を好む方々ですが、「何でも理屈っぽく考えてしまう自分にヘキエキしている」という方には絶対オススメ。性格を お直ししてもらえます!

 

ハイネケンの代償

© 2014 Informant Europe SPRL, Heineken Finance, LLC

老獪(ろうかい)な人質 V.S. 素人の誘拐犯たち。
このゲーム、≪代償≫を支払うのは どっちだ――?

ハイネケン誘拐の代償』 (ベルギー=イギリス=オランダ合作/95分)
6.13 公開。kidnapping.asmik-ace.co.jp

【STORY】 1983年、オランダ・アムステルダム。大ビール企業「ハイネケン」の経営者、フレディ・ハイネケンが誘拐された。世界屈指の大富豪の誘拐は世間を驚かせ、警察も巨大組織による犯行を疑う。しかし誘拐したのは、犯罪経験のない5人の若者だった…。ところが、人質であるハイネケンの傲慢な言動に、5人は翻弄され、歯車が狂いだしてゆく…。追い詰め、追い詰められる男たちが支払う “誘拐の代償”とは――?! (試写招待状より)

実話に基づく本格的 サスペンス・ミステリー。監督は スウェーデンの ダニエル・アルフレッドソン。犯人グループのリーダー格を演ずるのは、『ワン・デイ 23年のラブストーリー』(通信(100))や『アップサイドダウン 重力の恋人』(通信(172))、『鑑定士と顔のない依頼人』(通信(193))等の ジム・スタージェス。誘拐されるハイネケン役は、オスカー俳優の アンソニー・ホプキンス。
仲間と共同経営していた会社が不況のあおりで倒産…。銀行から融資を断られたコル(J・スタージェス)が、親友のヴィレム(サム・ワーシントン)らと身代金強奪計画を企てる辺りまでの展開は、スピーディではあるが定石的。それがハイネケンの登場辺りからガゼン面白くなり、さらに犯人グループの連帯感が崩れ始める辺りからは 青春アウトロー映画風のテイストが溢れ出します。誘拐されるハイネケンと お抱え運転手はモチロン、犯人グループにも味方してしまう気分にさせられたのは、この映画がエンターテインメントとして成功している証拠。
30歳を過ぎてなお、大学生役が似合っていた J・スタージェス(1978年生まれ)が、今回は実年齢に近い役を熱演し、イメージチェンジを 一応 果たしているようです。映画俳優としての彼の今後を考えると、17~19世紀頃の時代劇映画等にも出演して、大人の俳優としての立ち位置を徐々に築いて行く道もあるのでは?と思います。

 

yakusokunochi古代から語り継がれる、豊穣と幸福の理想郷。
多くの者が、この≪地上の楽園≫を目指した。
しかし、その地に たどり着いたものは いない――。
ヴィゴ・モーテンセンが全身全霊を捧げた、奇跡の旅。

約束の地』 (アルゼンチン=デンマーク=フランス=メキシコ=アメリカ=ドイツ=ブラジル=オランダ合作/110分)
6.13 公開。www.jauja-yakusokunochi.com

【STORY】 1882年のパタゴニア。アルゼンチン政府軍による先住民の掃討作戦に参加しているデンマーク人エンジニア、ディネセン大尉のひとり娘 インゲボルグが、海辺の野営地から姿を眩ました。娘を愛してやまないディネセンは 必死の捜索を繰り広げるが、思わぬ障害や険しい地形に行く手を阻まれてしまう。やがて馬を失って広大な荒野で孤立したディネセンは、一匹の犬に導かれて 摩訶不思議な世界に さまよい込んでいく……。(試写招待状より。一部省略)

『ロード・オブ・ザ・リング』(アラゴルン役)や『イースタン・プロミス』、『善き人』(通信(80))などの演技で熱心なファン層を持つ ヴィゴ・モーテンセンが、主演の他に製作と音楽をも担当した入魂の異色作。監督は アルゼンチンの鬼才:リサンドロ・アロンソで、昨年のカンヌ国際映画祭で批評家連盟賞を受賞した 幻想的な一種のロードムービー。
35mmフィルムの四隅が丸みを帯びた変形スタンダード・サイズ、しかも長回しのロングショットを多用した映像は、魔術的な幻燈を眺めているような気分に誘います。通常の商業的エンターテインメントとは質の異なる作品で、物語の意図の解釈は 観客各人の想像力に 100%委ねられている感じ…。オモチャの人形、水たまり、痣のある犬が 幾度も登場し、それが時空を超えて つながる 輪廻を描いているような印象。アロンソ監督は、「もしかしたら、女ごころの身勝手さを冷徹に見据えてきた人かも」と、想わせるフシもありました。
撮影は『ル・アーヴルの靴みがき』(通信(96))の ティモ・サルミネン。緑のあらゆる階調と衣装の赤のコントラスト等が独得で美しく、かつての 2色法テクニカラーの発色を強めたかのような色彩が目に焼きつきました。
知的な芸術作品を好む方々にオススメの類まれな作品。V・モーテンセンのファンの皆様は、立て続けに公開される彼の主演作、『ギリシャに消えた嘘』と『涙するまで、生きる』以上に見逃すべからず! です。

 

(C) 2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

(C) 2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

父が死んで、鎌倉の家に、腹違いの妹が やってきました――。

深く心に響く、家族の物語。

海街diary』 (日本/126分)
6.13 公開。umimachi.gaga.ne.jp

【紹介】 第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、マンガ大賞2013受賞の、吉田秋生のベストセラーコミックを、『そして父になる』の是枝裕和監督が映画化。長女に綾瀬はるか、次女に長澤まさみ、三女に夏帆、異母妹の四女に広瀬すずと 今を咲き誇る女優たちが集まった。両親を許せない長女と、自分を許せない四女。それそれの想いを抱えながら、四人が本当の家族になっていく一年間の物語。(試写招待状より)

この映画、実は未見です。試写に2度行ったのですが、1度めは開映時間に間に合わず、2度めは僕のひとり前に並んでいた方で「満席、締め切り」に…。コレは もう 映画館で観るしかありませんので、今回は 紹介のみで失礼させていたゞきます。

 

次回の試写室便りは、6月23日頃に配信の予定です。では!

 

 

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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 http://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

 


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