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大高博幸の美的.com通信(226) 6月のオススメ×2! 『グランド・ブダペスト・ホテル』 『ラストミッション』 試写室便り Vol.69

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GBH

© 2013 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

ベルリン国際映画祭銀熊賞<審査員グランプリ>受賞。
全米で歴代興行記録(1館あたりの興行収入アベレージ)を打ち立て、大ヒット。
世界中で大旋風を起こしているウェス・アンダーソン監督最新作!!

格式高いグランド・ブダペスト・ホテルで
夢のひと時をもてなす“伝説のコンシェルジュ”が、
ルネサンスの絵画をめぐる連続殺人事件の謎に挑む!
グランド・ブダペスト・ホテル』 (イギリス=ドイツ合作/100分)
6.6 公開。GBH.JP

【STORY】 美しい山々を背に優雅に佇むヨーロッパ最高峰のグランド・ブダペスト・ホテルは、今日もエレガントな上客たちで賑わっていた。彼らのお目当ては、“伝説のコンシェルジュ”と呼ばれるグスタヴ・H。彼の究極のおもてなしの秘密は、マダムたちの夜のお相手も辞さない徹底したプロ意識にあった。
ところが、一夜にしてホテルが崩壊の危機に! 長年懇意にしていた伯爵夫人が殺され、莫大な遺産から1枚の絵画を贈られたグスタヴが、容疑者になったのだ。ヨーロッパ大陸を逃避行しながら、愛弟子のベルボーイのゼロと、肉親よりも固い絆を結ぶコンシェルジュの秘密結社の力を借りて、謎に挑むグスタヴ。果たして、自らの潔白を証し、命より大切なホテルの威信を守れるのか――?(プレスブックより)

「映画界で唯一無二の存在、ウェス・アンダーソン監督の最高傑作」という評判どうり、最高に楽しくて面白い綺麗な映画。上映時間100分の中で 構成のバランスが少し乱れる点が唯一の弱点とは言えるのですが、本作は 映画ならではの魅力を目一杯詰め込んだ 夢のアソートボックス! エレガントでノスタルジック、スタイリッシュでチャーミング、ゴージャスでキュート、スリリングかつユーモラス、etc、etc、誉め言葉が溢れ出てきて整理がつかない程です。

色彩が とにかく美しい。画面は シンメトリーな構図が多用され、さらに 1968年の場面では シネマスコープサイズ、1932年の場面では スタンダードサイズに変わる演出など、それぞれの時代のムードを感じさせるという以上の 独得の効果が出ていました。

登場人物として非常に魅力的だったのは、グスタヴ・H(レイフ・ファインズ)、若き日のゼロ・ムスタファ(トニー・レヴォロリ)。さらに伯爵夫人 マダムD(ティルダ・スウィントン)、マダムの代理人 コヴァックス(ジェフ・ゴールドブラム)、軍警察の大尉 ヘンケルス(エドワード・ノートン)。
このうち、ティルダ・スウィントン(実年齢52or53歳 )が、84歳のマダムD役を 美しい老けメークで演じているところが実に見事。
小さなコトですが 不思議に感じたのは、ホテルのメイド役のレア・セドゥに 見せ場が全くなかったコト。もしかしたら 編集の段階で、彼女の出演場面がカットされてしまったのかも…。

それは ともかく、本作は 特にビジュアルの美しさ、エレガントな おとぎ話や絵本の世界に惹かれる皆さんには 絶対オススメ! 僕は この映画を観た皆さんと、座談会をしたいくらいです。

P.S. “マダムたちの夜のお相手”の件は、台詞に少しだけ出てきますが、具体的な描写は全くありません。その点、心配は御無用です。

 

ⓒ2013 3DTK INC.

ⓒ2013 3DTK INC.

パリを舞台に繰り広げられる、エキサイティングなアクション・エンターテインメント大作!!

思春期の娘≧史上最高に危険な任務。
ベテランエージェントに課せられた最後の任務とは?!
ラストミッション』 (アメリカ=フランス合作/117分)
6.21 公開。Lastmission.jp

【STORY】 ベテランCIAエージェントのイーサン・レナー(ケヴィン・コスナー)は、病にかかり 余命宣告された事を きっかけに 危険な仕事を引退し、残された時間を別れた家族と過ごそうとパリに行く。しかし、家族との空白の時間は なかなか埋める事が出来ず、父親の仕事が普通とは違うのでは、という疑問を持っている思春期の娘 ゾーイ(ヘイリー・スタインフェルド)とは溝が深まるばかり。そんな中、女エージェントのヴィヴィ(アンバー・ハード)から、延命できるという治療薬を餌に 現役最後の仕事を持ちかけられる。それは、凶悪で冷徹なテロリストを仕留めなければいけない史上最高に危険な仕事だった。果たして、彼は 世界の危機を防ぎながら娘の信頼を勝ちとるという 同時進行不可能な<ラストミッション>を遂行する事ができるのか?! (プレスブックより)

もう 脇役でガンバるしかないのかも…と想っていたケヴィン・コスナーが 主役を張っている! それだけで観ずにはいられなかった作品ですが、想像以上に満足度の高い出来ばえで、昔からのコスナー・ファンを大喜びさせるコトは絶対確実。しかも 監督:マックGの演出が実に素晴らしく、ゴールデンウィーク辺りに公開されていたならば、今頃はクチコミで相当なヒット作になっていたんじゃないか、という気さえしています。

開巻 間もなくのアクション・シーンで、コスナー演ずるイーサンは ムセるような咳をしていて、その顔のアップは相当シワっぽい(昔の彼の なめらかな肌を期待してはいけません)。「しつこい風邪だ」とボヤきながら ドラッグストアで咳止め薬を買ったりもするのですが、やがて激しい咳と共に喀血し、運び込まれた病院で余命3ヶ月(から5ヶ月、だったと思います)と宣告される。
その辺りまで来ると、本作がドンパチ中心のアクション映画ではないコトが分かってきます。16歳になる娘が 別れた妻のクリスティン(コニー・ニールセン、適役・好演)と暮らしているパリへ向かった後、同時進行不可能な<ラストミッション>の遂行へと突き進んで行くのですが、スリリングなシーンとヒューマンなシーンを絡めての展開が 最後の最後まで興味をそゝります。細かいカット割りで編集されたアクション・シーンは、CGに頼っていないだけに極めて迫真的。しかし、フツーの場面でも マックGのプロフェッショナルな演出力に 魅了され続けました。たとえば、

① イーサンのパリのアパートに不法に居住していたアフリカ人一家とのエピソード…。都合よく作られた話だと考えれば それまでですが、その一家に子供が生まれた場面で、イーサンが父親としての自分の過去を振り返らざるを得なくなる という心理的な描写の後、ピカピカと光り輝くエッフェル塔を背に、ひとり佇むイーサンの手が箸を持ち上げ、次いで その箸が寿司をつまみ上げて 口へ運ぶという、何気ないワンカットを巧妙に挟み込んでいる。
② 別れたとはいえ、今も愛し合っているクリスティンとイーサンのベッド・シーン…。そうなる という暗示の後、翌朝の場面へと続き、充ち足りた顔の ふたりの穏やかな やり取りが映し出される。“男が激しく腰を動かし、女が あえぎ声を上げる”などという陳腐な場面は一切ナシで、ふたりの官能と心理状態を 濃密に描写している。
③ イーサンが娘に 自転車の乗りかたを教える場面…。練習の様子と会話のショットが交互に映し出され、背後で ひなたぼっこをしていたらしい数人の年配者のグループが、自転車を乗りこなせるようになった娘に拍手を贈る。そのグループを 背景の一部としてのみ扱いながら、時間の経過をも自然に表現している。
また、④ イーサンが眩暈に襲われるシーンで、画面が鼓動音に伴って 縮んだり伸びたり ヒキツレたりする映像処理も、卓越したプロフェッショナルの技 そのものでした。

唯一残念だと感じたのは、ヴィヴィ役のアンバー・ハード。この役を演じ切るには若すぎて、キャラクターに奥行きと味が不足していたコトです。
それ以外は 本当に満点のエンターテインメント。ケヴィン・コスナー×マックG、それに脚本のリュック・ベッソンが 再びタッグを組んでくれるコトを熱望します。

P.S. 親友と一緒に観るのもオススメですが、彼氏と一緒にが 多分ベスト。
それから、この映画で初めてケヴィン・コスナーを知って興味を持ったという方は、彼の若かりし日の作品、『フィールド・オブ・ドリームス』(89)、『ダンス・ウィズ・ウルブス』(90)の2本を ぜひ観てください。さらに、『ロビン・フット』 『JFK』(共に 91)、『追いつめられて』 『アンタッチャブル』(共に 87)辺りを観ると、彼が人気・実力共に最高のアクターだったコトが よく分かります。

次回の試写室便りは、『浮城(うきしろ)』と『超高速! 参勤交代』について、近日中に配信の予定です。では!

 

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ、美容業界歴47年。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 http://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

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