高級三ツ星フレンチレストランの厨房に奇跡を起こす——。
パリの空の下、料理に込めた「愛」と共にお届けする、美味しい人生の物語。
『シェフ! 〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜』(フランス映画)
12月22日からロードショー。
詳しくは、chef.gaga.ne.jpへ。
この映画は面白い。「楽しいかどうかは行ってみなければ?マーク」のパーティへ出掛けるくらいなら、この映画を観に行くほうが正解。親友と観ても彼氏と観ても花マルは間違いナシでしょう。
思い入れが激しすぎる上に生意気な性格が災いして、どこへ行ってもクビにされちゃう若手シェフのジャッキー・ボノ(ミカエル・ユーン)と、正統派すぎるためか新作のクリエーションができずにいるベテランシェフのアレクサンドル・ラガルド(ジャン・レノ)。このふたりのコンビネーションが絶妙で、大きなお腹(妊娠8〜9ヶ月位)を抱えたボノの恋人ベアトリス(ラファエル・アゴゲ)と、卒論に挑戦中のラガルドの娘(サロメ・ステヴナン)の脇筋も充実、さらに三人のセミプロシェフ達もキャラが愛らしく、トータルで いい感じです。
一番笑えたのは、ラガルドとボノが評判の最前衛レストランへ偵察に出向くシークエンス。顔を知られているふたりは変装して出陣するのですが、その一連の場面は抱腹絶倒。試写室でも大爆笑が繰り返し起きた程でした。どうオカシイかは観てのお楽しみですが、特に我々日本人には大受け必至。ここではミカエル・ユーンの抜群のコメディセンスに感服しました。
見惚れたのはベアトリス役のラファエル・アゴゲのメークアップ。もともと凄い美人なのですが、ダークなバーガンディ×リッチブラウン×ダスティローズのアイシャドウを丁寧にブレンドした深い眼の美しさ。服装に合わせて、ベージュやグレイやプラムカラーで変化をつけているところも素晴らしい。その最も美しい顔のスティルがないのは残念至極、スクリーンで ぜひともじっくりと観てください。ちなみに彼女のメークに使われたのは、ジョルジオ・アルマーニのコスメのようです(最後のクレジットに、Beauty:GIORGIO ARMANIと小さな文字で記されていましたから、間違いないでしょう。僕の想像で、「コレを混ぜて使ったのでは?」というコスメをアップしておきます)。
キャッチコピーに“問題だらけのシェフたち”という表現がありますが、半分は そのとうり、でも半分は その逆でした。むしろ問題だらけなのは、「我こそはビジネスライクなスマートな男」とひとりよがりしているレストランのオーナー氏(ジュリアン・ボワッスリエ。顔はチャーミング)というコトが観ているうちにわかってきます。その彼が父親(今は引退の身の先代オーナー。演ずるのはピエール・ヴェルニエ)に一喝されるシーンが小気味良くて、「ざまぁ見ろ!」ってな感じでしたよ。
ひとつだけ文句…。厨房のシーンでは、シェフ達の白い制服の部分に白文字の字幕スーパーが出るのですが、コレは読み取りにくくて困りました。セリフは丁々発止でスピーディ。なので字幕もパッパッと変わるし、もう少し工夫してほしかった…。
でもでも、この映画、面白いし気持ちがいいし、もう一度観たいくらいです。
エリザベス朝の愛と陰謀が交錯する<文学史上最大の謎>が いま暴かれる。
『もうひとりのシェイクスピア』 (アメリカ映画)
12月22日からロードショー。
詳しくは、shakespeare-movie.comへ。
古くから存在した“シェイクスピア別人説”を題材とした、エリザベス王朝時代の歴史ミステリー。
僕は観ているうちに、「これは仮説ではなく、この仮説こそが真実」と思えてきました。そう思わせたのは、特に第一主役のオックスフォード伯爵エドワード・ド・ヴィアを演じたリス・エヴァンスの迫真的演技。メークひとつをとっても演劇的なスタイルを通しているにも拘らず、まるで実写映像を観ているような気持ちにさせられたから立派です。上映時間129分が長く感じられなかったのは、彼を筆頭に、ヴァネッサ・レッドグレイヴ(晩年のエリザベス一世役)、セバスチャン・アルメストロ(ベン・ジョンソン役)らの演技に惹きつけられたから。また、時代考証の行き届いた衣裳の数々には目を見張らされました。
ひとつ相当困ったのは、フラッシュバックの形で登場する若き日のエドワード(演ずるのはJ.C.バウアー)の顔…、特に特徴のある歯並びや骨格が老いた日のそれと少しも似ていなかったコト。そのため、僕自身の不覚ではあるのですが、彼らが同一人物だと はっきり理解するまでに、少々時間を要したのでした。
この種のコスチュームプレイには、登場人物達の関係の複雑さ(血縁関係・敵と味方・若き日の姿と老いた日の姿etc)が観賞の妨げとなるコトが応々にしてありがちです。そこで、この映画を観る前にオススメしておきたいのは、主要人物の相関図を大体で構わないので、顔を含めて頭に入れておくコト。それだけで観る楽しみが増すはずです。
愛する人の子供を授かった!
妊娠したら母性は目覚め、出産後は赤ちゃんとの楽しい生活が始まるもの…。
そんな幻想を抱いて飛び込んだ新生活は、戸惑いの連続だった。
『理想の出産』 (フランス映画)
12月22日からロードショー。
詳しくはrisounoshussan.comへ
もしも不注意に予告編を作ったとしたなら、「ポルノ映画?」と誤解される可能性もありそう。でもコレはマジメでマトモなマタニティ・シネマ(性教育映画でもありません)。メインタイトルには あえぎ声が入っているし、最初から少し心配になるかもしれないけれど大丈夫。
チラシに漫画家・内田春菊さんのコメントが載っていましたが、僕も大体そのとうりだと感じました。内田さんは、「これから結婚、出産を経験する人は必見(…)。子を持つことで つきつけられるあれこれをシュミレーション出来ます。これから子を持つ女性におすすめ」と記しています。
以下、印象に残ったキャラクターやシーンについてのメモ×3。
① ヒロインのバルバラの恋人ニコラ(映画監督志望、レンタルビデオ店の従業員)は、彼女の妊娠が判明すると驚きながらも結婚を決意、夢を諦めてサラリーマンになる…。この場合、彼は責任感と愛のある相当いい人です。But,すべての男性が こういう行動に出るとは限らず、むしろ彼のような男性は割合として少ないのでは? と思います。
② ニコラの母親というのが困った人で、何かにつけてシャシャリ出てくる…。個人主義を重んじるフランスにも、こういう人がいるなんて…。
③ 後半に出てくるバルバラとニコラのSEXシーンが相当良かったです。なんだか ふたりが愛らしく見えて。あと少しでクライマックスに達しそうという時、突然ベビーの泣き声が隣室から聞こえてくる…。バルバラはニコラを押しのけてベビーの部屋へ行こうとするのですが、ニコラはバルバラの足をつかんで組み倒し、そのまま床の上でフィニッシュ!! バルバラも多分、久し振りに良かったんじゃないかと僕は想像しました(笑)。But,このシーンも決してイヤらしくはなく、むしろ若い夫婦の生活の一コマとして、ほほえましく感じられたのでした。
ビューティ エキスパート 大高 博幸 1948年生まれ、美容業界歴45年。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。 |