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Channel: 大高 博幸 –美的.com
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大高博幸の美的.com通信(137) 『ゼロ・ダーク・サーティ』 試写室便り No.37

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Jonathan Olley(c)2012 CTMG. All rights reserved.

ビンラディンを追いつめたのは、ひとりの女性だった。
全米騒然!!  早くもアカデミー賞®大本命の呼び声!!
米政府が隠し続けた衝撃の真実が、遂に明かされる――
『ゼロ・ダーク・サーティ』 (アメリカ映画)
2.15からロードショー。
詳しくは、zdt.gaga.ne.jpへ。

2011年5月1日、「アメリカ同時多発テロ事件の首謀者ビンラディンが殺害された」という衝撃のニュースが、あまりにも唐突に、しかも簡潔すぎる程の簡潔さで全世界に報じられました。

その夜遅く、ラジオの前で続報を待ちながら、あの9.11から数日間の出来事を、僕は相当鮮明に想い出していました…。翌日のモデルメークの仕事で御一緒させていただいたカメラマンのK・Nさんが、「あのビルで働いている友人の安否が心配」とツブやき、いつになく落ち着けない様子だったコト。そのまた翌日、J-WAVE(FMラジオ局)からの連絡で、「明日の生放送、トーク内容を変更したいのですが…」という話になり、スタジオでは共演者のDJ・M・Mさんから「父が少し前まで、あのビルにいたの」と聞かされたコト、etc、etc…。「あれから、もう10年が過ぎたのか」と、僕なりに感慨深いモノがありました。
しかし、いくら待っても続報・詳報はなく、同じ内容が繰り返し簡潔に伝えられるだけ。「コレは国家機密レベルの話だからかも」と考え、僕はラジオのスイッチを切って眠りについたのでした。

この映画は、その5.1の真実に迫った衝撃作。題名の『ゼロ・ダーク・サーティ』とは“AM0:30”、ビンラディンの捕縛作戦決行の時刻を意味する軍事用語であり、米政府が隠し続けなければならなかった10年間の軌跡が、ここに初めて明かされています。企画から完成までの間に数々の妨害が入り、米政府も先の大統領選への影響を危惧したという本作は、昨年末にNYとLAで限定公開された後、新年1月11日から全米一斉公開が始まると同時に大ヒット。1月18日までの短期間に、少なくとも53の賞(作品賞・監督賞・脚本賞・主演女優賞・編集賞など)を受賞しています。

音声のみで始まる9.11の あの瞬間から、極秘作戦の成功までを綿密に描いた内容で、上映時間は2時間38分。しかしムダな場面など皆無な上、時と場所の変化を示す字幕にも助けられ、観る者は画面に没入、長さを感じる余裕さえありません。
さらに終盤、作戦実行部隊のネイビーシールズがビンラディンの隠れ家に いよいよ突入しようとする辺りから先は、まるで部隊の一員となって現場に踏み込んでいるような気持ちにさせられました。その様子については記せませんが、試写室では座席の背から離れ、最後まで身を乗り出したままで画面に観入っている人も数名いた程です(But、それは後の席の人の迷惑になるので、自制する必要がありますよね)。ついでに記すと、僕が観た回の試写では、いつもと様子が違い、座席は両端から埋まって行きました。積雪の残る寒い日だったせいもあり、おそらく途中でトイレに立つ可能性を考えてのコトだったのでしょう。しかし、上映中に席を離れた人は全くいませんでした。

主役のCIA分析官マヤを演じているのは、『ヘルプ  心がつなぐストーリー』の助演(頼りなげで非常に愛らしかったシーリア役)で一躍注目されたジェシカ・チャステイン(2012.03.05配信の通信(91)を御参照ください)。本作では それとは完全に異質な、断固とした意志の強い女性を演じているコト自体が驚きですが、任務に対する責任感と使命感を、上司も唖然とする程の執念へとエスカレートさせていくプロセスを、迫力を持って好演しています。取り調べの場面では黒髪のウィッグを被ったり、パキスタン風のベールをまとったりしていますが、ほとんどの場面でファンデーションもマスカラも使っていないように見えました。

捜査が行き詰って苛立つマヤに突破口を与えたのは、“あり得ない人為的ミス”の発見を報告してくれた新人スタッフ(事務員風にも見える若い女性)と、“特別なケイタイ電話”を入手して届けてくれた心ある同僚の黒人男性。どれだけマヤがヤリ手であっても、この二人を始めとする多くの人の助力がなければ、このミッションはカラ振りに終わった可能性が高いのです。

話が前後しますが、ジェシカ・チャステインは『ヘルプ』の時よりも体重を数キロ落としたような印象。その頬のまろやかさと張りの低下に、僕は少々不安を覚えました。この後は徐々に体重を戻して、シーリアのような役を再び演じてほしいというのが僕の単純な本音です。しかし彼女は、タイプキャスティングに甘んじる類の女優ではないというコトが、本作を観て よくわかりました。1.13のゴールデン・グローブ賞までだけで、既に13の主演女優賞を獲得した彼女の今後の活躍に、僕は一層期待したいと思います。

P.S.  本作にはSEXシーンは出てきません。チームリーダーによる尋問中の拷問場面などは特に気の弱い方には少々酷かもしれませんが、しばらく目を伏せていればいいだけのコト。誰と一緒に観ても大丈夫。御両親と一緒にでも100%(正しくは95%!)大丈夫です。

 

ビューティ エキスパート
大高 博幸 

1948年生まれ、美容業界歴45年。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 http://www.biteki.com/article_category/ohtaka/


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